大人


 説明不要、東京事変の2ndアルバムです。メンバーの脱退により、このアルバムから新メンバー、伊澤一葉(Key.)と浮雲(Gu.)が加入しました。

 それではまず一曲づつにコメントを書きたいと思います。

1.秘密

 スゲー。30秒ぐらいで、一気にテンポが変化した。今までの林檎ちゃんの曲ではあまりあまりなかったですよね。このテンポチェンジは、フランツのTake me outにしか聞こえない。林檎ちゃんによるコーラス、ベースの太さ、やさしく叩いているときのドラムは、とても今までの作品に比べて大人(アダルト)な感じはします。このアルバムを象徴するような一曲でしょう。

2.喧嘩上等

 タイトルが凄いですね。まるでカルキの時を思い起こさせます。なんと言っても耳に付くのが、師匠によるウッドベース。非常にジャズ色が強い一曲です。ドンドン小気味よい音で進んでいって、すぐ終わってしまいますね。実際2分23秒。2曲目に置くには、ちょっと異色な曲。ただ、アルバム全体的に、こういうドンドン進んいくのが気持ちいいんですよね。

3.化粧直し

 今度は、アコギのアルペジオ演奏を入れて、ボサノバ風な曲。前半は。新しい東京事変はどんなタイプの曲もやりますね。こういう手数の多さも大人(アダルト)なんでしょうか?途中にくる、ペット(?)のソロも気持ち良いですね。しかし、後半いきなり音が歪み始める。この音の歪みがないとね〜。ただのボサノバで終わらせると、そりゃ林檎ちゃんじゃないですよね。

4.スーパースター

 後ろで聞こえる、古時計から聞こえてきそうな音が非常に印象的な一曲。たしか、亀田師匠曲ですよね。去年ライブでやっていたような感じのまま仕上がっていますね。らしいロックバラードじゃないでしょうか。

5.修羅場 Adult Ver.

 シングルよりも、僕はこっちの方が好きですね。やっぱりシングルのあのサビ前とかで入るピコピコ音が安っぽく聞こえたから、ちょっと敬遠気味だったんですが、こっちの方が、落ち着いて好きですね。アルバム全体的にベースが太いですね〜。凄く聞きやすい。前のスーパースターとともにアルバムの中核をなす曲ですね。曲と曲のつなぎはは凝るっていうのが林檎ちゃんの特徴ですからね。これがまた良いんですわ〜。アルバム通して聞きやすい。

6.雪国

 やっぱりこういう曲が椎名林檎のイメージとして、怨念の塊みたいに捉えられるんじゃないんでしょうか。違うんだってば〜!!って言いたいですよね、本当に。単に、きわめて心が落ち着いた状態じゃないですか。曲は非常に歌謡曲の要素が入った曲だと思います。ただね、ラストの40秒ぐらいから、次の曲につなげるためなのか、いきなりダンスミュージックになるんですね。打ち込みなのか、ドラムを歪ませてるのかわからないけど。これ生ドラムを歪ませていたらかなり凄いトラックですよね。ということで、次の歌舞伎に続きます。

7.歌舞伎

 ZAZEN BOYSで言うところの開戦前夜とかに当たる曲ですね。メンバー紹介とソロプレイがある曲です。ローのままあがるんで、僕かなり好きなんですが(雪国からのつなぎ含め)、サンパレスみたいなホールで盛り上がるのかな〜。非常に見えないんですが〜。東京事変のみなさまライブ良いものにしてください。

8.ブラックアウト

 なんかやっと普通の曲が来たって感じですね。落ち着く。この曲がシングルになんなかったの少し不思議ですね。ただ、詩はちょっと過激ですけど。

9.黄昏泣き

 子育てちゃんとしてんだろうな〜って曲ですよね。曲調はブラックアウトよりももっと落ち着く、ゆっくりとした曲。

10.透明人間

 ライブでやっていたよりも、細かい音をいろいろ入れて、良い意味でちゃちい曲調にしてますね。この曲はね。メロディーがしっかりしていますからね、ナイスナンバーですよ。文句なし。林檎ちゃんの歌声もこの曲だけはストレートですね。

11.手紙

 えっ!もうラスト!?ってな具合で、アルバム進んでいきますよね。全体的に聞きやすいアルバムだったから、ラストは勝訴のときみたいに長くしなくても大丈夫でしょう。このアルバムのラストにして、ふさわしいです。こういう“心”とかみたな、スローに盛り上がる曲を書かせたら、やっぱり林檎ちゃんは天下一品だと思う。


 ごめんなさいが、詩をまだ読んでいません。だから、詩の方はあまりわかりません。

 このアルバム、本当に大人(アダルト)な作品になっています。いろんな意味で。

 このアルバムを聞いてびっくりした。うん。こんなにクリエイティブな作り方をしていて、かつ成功作ができるってなかなかないと思う。正直、僕は東京事変のことをなめていました。たしかに、“前作は本当に教育的な内容で誰でも、子供でもわかるように作ったから、今作は誰にでもってわけにはいかないようなのを…”ってのは情報として知っていた。聞く前は、“カルキ〜”のようなすんごいドロドロしているような作品になるんじゃないかと心配していた。ただ、聞いて安心した。大丈夫、東京事変はナイスな作品をきっちり届けてくれたのでした。

 今作のクリエイティブかつ成功の要因は、特に伊澤の存在が大きいだろう。林檎ちゃんも、いくつものインタビューで伊澤と喧嘩をしながら作ったエピソードを語っている。そこで、かなり嫌な奴みたいなことは言っているんだけど、やっぱりそれも底にリスペクトの心をね持ち合わせているからなんだろうね。かなり、議論とか意見交換とかしたんだろうな〜。こういう真のところでの意思疎通が出来ているところが、大人(アダルト)だなと思います。こういう風に喧嘩しながら、作っていくところが非常に福岡人っぽい。にわかせんぺいのCMの世界観ですね。“たまには〜、喧嘩に〜、負〜けて来〜い”―“ごめん!!”みたいなね。あと、非常に今の向井秀徳のバンドサウンドの作り方にも似てるんじゃないかな〜とも思います。

 今作は非常に林檎ちゃん色が弱いアルバムだと思う。とにかく今までの林檎ちゃんの曲では、聞いたことのないサウンドだ。これはよく他のメンバーの意思がとても反映されているんだと思う。今作の林檎ちゃんはテキトーなんじゃないかな〜って思うことがある。別に悪い意味でではないです。それだけ、メンバーを信頼しているんじゃないかと。そのテキトーさが大人(アダルト)なんじゃないかなと思います。(最近、大人になるってことは、テキトーになることなんかじゃないかな〜って思い始めています。)

 あと、もちろんメンバーの演奏のスキルをものの見事に見せ付けられたことも、今回良かった点ですね。師匠はウッドベースを手にして、おそらくいつもはしないだろうジャズ風のベースラインを引いたり、あと全体的にベースの音が太くて、どの曲も気持ちいいですからね。あと、浮雲さんも、曲によりいろいろなギターを操って、曲に彩りを添えて、いい働きをしていると思います。そして、ドラムの畑さん。これがいいですよね〜。個性的というか、レベルの高い叩きをしてると思います。アヒト田沢公大級の凄いドラマーかもしれませんね、この人は。こんなメンバーのスキルの高さが大人(アダルト)じゃないかな〜と思います。

 とにかくこのアルバムは名作ですよ。今まで椎名林檎を聞いたことが無い人も是非聞いてください。クオリティ高いです。


大人(アダルト) (初回限定盤)(DVD付)

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