耳鳴り


 チャットモンチーの記念すべき1stアルバムの『耳鳴り』を買いました。

 この「耳鳴り」のエントリーについては、結構どういう方法で書くか迷いました。全曲レビューをしようとも考えたのですが、やっぱりまだ彼女らを完全にはまだ理解していないような気がするから、微妙な温度差が出てきたら嫌なので、このアルバムに当たっての総まとめみたいなのを書いてみたいと思います。

 とにかくとんでもないアルバムが出来てしまったと凄い評判だ。HMVは激プッシュしているし(http://www.hmv.co.jp/product/detail.asp?sku=1334491←に全曲レビューあります。それと特別インタも見もの。)、これを買ったタワレコでも1ブースできていた。

 アーティストないでも評判が高い。岸田繁後藤正文藤巻亮太といった、日本の正統派(ちゃんとメロを聞かすような)サイドのロックの人から非常に評価が高い。おそらくこの系図チャットモンチーも入っていくでしょう。それと、忘れてはならないのが、サウンドプロデュースをしたいしわたり淳治くんにとっても自信作となったみたいです。

 本人達も本当にこんなアルバムが出来てうれしいようだ。アルバムが出る直前の東京でのワンマンライブではこのアルバムの全曲をやったそうです。

 これからはチャットモンチーの魅力について書いていこうと思います。

 サウンドは3ピースって感じ。各プレーヤーの魅力がいい意味で激しくぶつかり合っている。えりこの力強く表現力豊かで、非常に歌詞が聞き取りやすいボーカル、そいで3ピースとしてはバッチリのギター。全曲にわたって聞き劣りがしないのは、彼女のスキルがやはり基本となる。あっこのベースは、時にはギターやドラムと激しくと呼応して、曲を激しく盛り上げる。そして時には、その曲を彼女の独壇場としてしまう変態的なサウンドを繰り広げる。きわめて職人気質なベースである。クミコンのドラムは、前の二人を温かくリズムを正確に刻むと見せかけては、時に非常に煌びやかなハットの音で、曲にキラッと光る輪郭を出してくれる。3ピースのバンドは3人の個性とそのバランスが重要になってくるけど、このバンドはそれを余裕でクリアしていっている。

 2曲目の“さよならGood Bye”、3曲目“ウィークエンドのまぼろし”は非常に演奏力のあるものになっている。非常に複雑な構造になっていて、気合を入れて頑張って作ったって感じがヒシヒシ伝わる。

 チャットモンチーは全員が詩を書くことが出来る。(曲は全部ボーカルの橋本が作っている。)詩にも3人のバラバラの個性が如術に現れている。

 今回一番才能が開花しているのは、あっこの詞だと思う。あっこの詞は本当に聞いていて面白い。

 東京に上京してきての不安や期待をハチ(ハチミツ)に上手いこと例えた、1曲目の“東京ハチミツオーケストラ”。『夢が夢でなくなる東京』っていうのがほんとに面白いラインだ。また、この曲はいろいろ深い意味を読み取れそうなんだけど…。まず、タイトルが〜ね。スカパラがハチミツになっちゃってますね…。そういうところが、非常に初々しいと言いますか…かわいらしいと言いますか…、非常にチャットモンチーらしい大胆的確なチョイスです。それに、この曲はバンド自体の決意表明にも聞こえるところが、ちょっと感情移入しちゃいますね〜。

 それに11曲目の“プラズマ”。なかなか共通の話題って言うのが無いのが男女の差の難しいところ。それをいろんなモノを詞にあげて、すごくみじか〜な、ゆる〜い感じに仕立て上げてとってもいいです。こういうふうに、身近なものを使って、自分の細かい感情を表現するのが、あっこちゃんは抜群に上手い。多分、いっつもいろんなものにアンテナ張ってんだろうな〜。センスが良くて、非常に彼女好きです。

 クミコンの詞は、他の2人に比べると、普通です。普通で良いです。普通で良いと“ハナノユメ”(4曲目)のような抜群に素晴らしい曲が出来てしまいます。他の2人非常にあくが強くて、それはそれで凄いけど、“ハナノユメ”のような詞はなかなか書けないだろうな〜。非常にベタと言いますか、詞になりそうな情景を描くのが得意なのが、クミコンです。

 リーダーの詞は非常にどぎついです。非常に個人的な感情を詞に爆発させる、典型的ロックンローラーのタイプです。“恋愛スピリッツ”(9曲目)って曲は、かつてこんな歌詞を書いた日本の女性ミュージシャンはいたでしょうか?女の子の内面の鋭すぎる不安や怖さ(ヘタしたら怨念)って言うのを、ストレートにストレートに吐き出したこの曲の詞は、鳥肌ものです。自分にはわかんないだろうな〜、この詞。凄いでしょ!この曲。そして、もう1曲“どなる、でんわ、どしゃぶり”(5曲目)。これも凄く内容が重いですね〜。生生しいです。詳しくはもう実際に聞いてください。聞くしかない。とにかくリーダーは今までの作詞家よりも一線を超えるものを目指している、野心家ともとれます。

 とにかく、チャットモンチーのまだ計算までは出来ていない、彼女らの生の感性をモロに出した作品になっています。彼女らの魅力ってのを、僕も全部読み取れたわけではありません。まだまだ聞き応えがありそうですよ〜。

 唯一欠点を言うならば、あまりに精錬されていなくて、ポップという意味ではどうかということ。これって普通の人が聞いて伝わるのかな〜。それが、ちょっと僕には不安に思える。


 この「耳鳴り」を引っさげての、全国ツアーが決まりました。

 福岡は10月21日(土)、DRUM SONにてのワンマンです。これも必ずチェックですね。耳鳴りの魅力を生で確かめる絶好の機会です。ソンだから、メンバーとも近いぞー!!生でえりこもえ〜!もできるチャンス!

耳鳴り

耳鳴り

 あと、全然関係ないけど、ヨムヨークトムヨークも貸してもらったので、最近よくきいています。これいいですよ。良作であることは間違いない!

ジ・イレイザー

ジ・イレイザー