2008 BEST ALBUM TOP 10


 年間アルバムチャート、後半部分です。TOP10を発表

 実はベストアルバムについては、もう一つエントリーを書こうと思っています。題して、Out of Ranking。ランクから外れてしまった者たちについても、少し述べようと思っています。

1. 「The Age Of The Understatement」 The Last Shadow Puppets

The Age of The Understatement

The Age of The Understatement

 イギリスのゼロ世代TOPバンド・Arctic Monkeysのフロントマンと、その親友(彼はラスカルズというバンドをやっている)の2人で、コンセプト的に作られたユニットが、このラスト・シャドウ・パペッツだ。彼ら2人は、60年代のレコードをディグる(漁る)ことによって、スコット・ウォーカーという音楽家を発見する。彼をローモデルとして、インディロックが大衆化したイギリスの若いメンツによるシーンでは全く見られない、大掛かりなオーケストラやストリングスを導入して、非常な壮大な音楽を作り上げた。コンダクターを取ったのは、アーケードファイヤーなどでもやっている、オーレン・パレット。

 今年のNo.1を彼らに渡した理由は、とにかくセンスのよさです。押しも押されもせぬNo.1バンドのアークティックで、普通にやっていればいいのに、なんでこんな別ユニットを作ってまで、わざわざな遠回りなことをやるんだろ〜、って思ったけど、音がもう完璧なんですよ。それでいて、やっぱりNo.1のソングライティング力。ははは〜、文句つけるところ無し。11曲目「Meeting Place」とか、もうすげえ曲ですよ。大好きです。

 サウンドが最高、ソングが最高、そしてなによりアイディアが最高、発想の仕方が最高、参照点が最高だし、用いた人員をも最高。トータルしたセンスは、もう絶対他の誰にも適いはしない、抜群にかっこいいものです。アレックス・ターナー、本当にものすごい男だな。

 どうしてもCDを手に入れざるを得ない、とにかく強烈に惹かれる存在。2008年No.1ですよ、本当に。

2. 「Design」miu mau

Design

Design

 福岡の3つのグループ(coet cocoeh、百蚊、雅だよ雅)のメンバーである、3人の女性によるコンセプトユニット・miu mau。

 1曲目「無数のヒカリ」。3人のコーラスワークにより、「開放」(カイ、ホー)」という単語が、やがて「崩壊(ホー、カイ)」に聞こえるという、音声によるトリック。この1曲により完全にはまった。

 去年の個人的にベストと思った、ゆらゆら帝国の「空洞です」や、Radioheedの「In Rainbows」といったものと共振する分子が、この福岡という小さなシーンから出てきたという事実に、本当に驚いた。しかも、それをやっているのが、30歳前後である女性3人組み。しかも地元でずっと活動してきた音楽家による力であるということ。どうやったら、このような音楽を作ることができるのか。今までこんなディスク見たこと無い。

 クールでオシャレ、そして落ち着いて聞くことができる、新感覚としか表現できないアルバム。年末にLiveを見ることができたのですが、一緒に見てた人(女性)が「miu mauちゃんは、女の子感じを本当に表現してくれる」と言っていました。納得します。女性を敵にすると、本当に怖いですよ〜。そんなものをリアルに覗いて見た、そんなアルバム。世紀の大傑作。

3. 「Friendly FiresFriendly Fires

フレンドリー・ファイアーズ

フレンドリー・ファイアーズ

 こいつらは本当に音楽バカなんだと思う。こんなファーストアルバムを作り上げてしまって、この先の活動の選択肢狭めるよ?本当に。大丈夫なの?本当に。

 まだこのディスクを手に入れていない方、今すぐにCD屋に駆け込んで封をあけプレイヤーに差し込んでしまえばいい。もう全く不安になることはない。頭から流れる曲にただひたすら体をゆだねればいいだけだ。1曲目から、ラスト10曲目まで最高の曲たちが私達を踊らさせてくれるから。ただひたすら踊ってくれ。音楽好きならば、もうそれだけで踊れないわけ無いでしょ?、この曲たちには。そして言葉がわかるなら、歌ってくれてもよい。言葉がわからなくても、それっぽく言ってもらえれば、それで十分だ。そして後に残るのは、少しのほどよい疲労感と、うっとりとしたロマンティックなあの感情だけ。

 もう10年に数枚しか出ないよ、こんなアルバムは。思い当たるのは、Raptureの2ndぐらいだよ。Paris1曲をダウンロードで手に入れて、ニヤニヤしてるだけの、そこのあなた。今すぐこのアルバムも聞いたほうがいい。10曲すべて、名曲です。

4. 「Vampire Weekend」Vampire Weekend

吸血鬼大集合!

吸血鬼大集合!

 このアルバムを初めて聞いたのは2008年の初頭だった。これを聞いて、今年はとにかく“感じるアルバム”がキーワードになってくると予感した。それで知識うんぬんや、技術的なうんぬんよりも、とにかく感じるがままに音楽を手にとった。だから、このアルバムは2008年の定規となったアルバムだ。自分の中の定規を明確にするために、このアルバムをとにかく聞きまくったのが、2008年の初めのほうでした。

 今まで聴いたことが無かった、こんなにスカスカな音作り。そしてボーカルもスカスカで、ひたすら享楽的。ゆったりとしたムードの中、やわらかな音に満たされた11曲34分です。レトロな音作りをしているのが、古びたソングではない。今聞くことによって、最高な曲たちだ。まだクラスヌがキースで行われていたころ、ハッピーな空気が起きそうな予感が漂う中でならされた「A-Punk」は、最高のダンスナンバーだった。

 間違いなく2008年の最重要盤。

5. 「GAME」 Perfume

GAME(DVD付) 【初回限定盤】

GAME(DVD付) 【初回限定盤】

 間違いなく2008年の、邦楽の最重要アルバム。2008年のベストで、これを自分のブログで次点とかに取り上げているやつ、全員死ね(と言いたい)。そんな中途半端なものじゃない、間違いない大傑作だろう。このアルバムの喜びをみ噛み締めるべきである。

 まさかB級アイドルだったPerfumeが、ここまでの作品を届けるようになるとは、誰も思っても見なかっただろう。とにかく彼女達を押し上げたのは、時代の機運だった。とにかく誰もが聞けて、それはまさにアイドルというフォーマットを最大限に使って、最高の音楽を聴きたいという、もう誰にでもある理想だった。次第に力が溜まってきたビックウェーブを、的確に捉えた中田ヤスタカと、3人のキャラクターによって演じられたこのアルバムは、最も素晴らしい至福の瞬間以外の、他に何にででもないのだ。

6. 「BEST FICTION」安室奈美恵

BEST FICTION(DVD付)

BEST FICTION(DVD付)

 安室ちゃんにとって2008年は2回目の集大成の年となった。こうやってパッケージとして曲を並べてみると、すんげえ曲が並んでいます。小室以降の安室ちゃんの偉業の数々はものすごいものがあるな〜ってゾクゾクと感じます。

 本格的なと言うと語弊があるかもしれません(私が本格的なR&Bサウンドを語れるとは思えないから)。ただ、聞いていて凄くクールでセンセーショナルだし、かつすごくポップ。どの曲を聞いても安室ちゃんとすぐわかる。そんなハイセンスなことをしつつも、年間アルバムのTOP5に入ることができるってのが、すごい力だよな〜って思います。

 アイコン力、素材力すべてが日本最強。まさか10年後も、安室ちゃんが未だに頂点にいるとは思ってもいませんでした。この安室ちゃんが必要だと感じている人たちがシッカリ守って、カタチにしてきたという事実にも、驚愕を隠しきれません。これからのPerfumeの周りに必要なのは、このような力じゃないかと思います(最後Perfumeの話にして、申し訳ない)。

7.「We ate the machine」POLYSICS

We ate the machine

We ate the machine

 ビックになっていくポリシックス。とんでもないアルバムを上納しました。なんでこのアルバムがスヌーザーのチャートに入ってないんだ!?ありえないだろ。

 日本のフェスでも、ヘッドライナー級のアクトにまでなって、“スタジアムバンド”というのが似合うバンドになりました。それを象徴するのが1曲目の「Moog is Love」。今年のライブでこの曲をやっているポリシックスは、非常に堂々としていて、今までになかった圧倒感が出てきました。しかもそれが、今までのカオティックな溢れんばかりのエネルギーの発散を止めることなく行われているっていうのが、本当に素晴らしい。ポリシックスは、ポリシックスのままビックになることに成功しました。

 とにかくバンドが充実しているのが良くわかる一作だ。シングル曲が前半に並んでいるが、後半の曲もすばらしい。「DNA Junction」「イロトカゲ」「Mind Your Head」「Digital Coffee」「Boys & Girls」と、ライブではもはや定番として定着しようとしている曲がゴロゴロ並んでいる。とんでもない傑作アルバムだ。一緒に過ごしていて幸せな瞬間を、このバンドが迎えている。

8.「Day & Age」The Killers

デイ&エイジ

デイ&エイジ

 安心して聞くことが出来た、王道ロックな一枚。これだけきちんとロックできるバンドって、他にはほとんど居ない。奇抜さや実験性が強く求められる時代の流れになっているが、今年私が聞きたかったのは、安心感・安定感のあるミュージックでした。あと古臭いものをリテイクするものも多かったが、軒並みなそんなやつらよりも、しっかりとした大きなフォーマットでの今のサウンドを作ることができている。だからこそ評価できる。

 前作の、冷たい風が吹いて寂れたような荒廃な雰囲気が弱まり、1stの頃のようなキラキラと輝くようなサウンドが帰ってきた。これがキラーズだ。愛してやまなかったキラーズの姿がまた見ることができた。やっぱりキラキラさが好きだぜ。

9. 「シフォン主義」相対性理論

シフォン主義

シフォン主義

 今年の日本インディの勝者。話題を全部かっさらっていた感があります。

 クールで都会的なムードのサウンドに絡む、あまりにも未熟な、もはや萌えとしか言い表せないボーカル。東京のインディキッズのリアルが、突き刺して表現されていると感じることができます。

 特にこいつらの素晴らしいのはリリックだ。とにかく意味を持っていないんだけど、意味ありげなラインを絶妙に繰り出す。ワードのセレクト、音との親和性のセンスも抜群である。「CIA、KGB、FBIに共産党の陰謀よ、誰か私を逃がして」「ここ ここ ここはどこ 宇宙 あたし中央線乗り越して気づいた 明日は始業式」「コントレックス箱買い」など、名フレーズをいくつも繰り広げました。

 演奏はペナペナだが、それで完璧だ。あくまでムード作りだ。未熟のまま完成されいる。

10. 「Music for an accelerated culture」Hadouken!

ミュージック・フォー・アン・アクセラレイテッド・カルチャー

ミュージック・フォー・アン・アクセラレイテッド・カルチャー

 
 なーんか知らないんだけど、この下世話なバンドを愛してしまうんだよな〜。めちゃめちゃカッコよい音作りしているわけでもないんだけど。うーん。完全に勘で話すが、このサウンドにピンと来るのは僕ら世代にだけじゃないかな?84年生まれぐらいの人たちなら、どこかリアルで体験したことがあるって懐かしさを微小ながら感じてもらえることが出来るんじゃないかと思う。

 彼らは1曲目から「Welcome to our world, We are the wasted youth, and we are the future too. (ようこそ我々の世界へ、私達はどうしようもない青春を過ごしている、そして未来もそれと同じなんだ)」と、自分達をならず者の世代だと言い表す。そして、そんなダメダメな世代だから、とにかく騒ぐときには騒げと私達を書きたてる。特に「Liquid Lives」なんかはそんな曲だ。しかしその反面、その騒ぎ終わった後に、何も無くなってしまう時間が待っていて、どうしてもそれから逃げることが出来ないことも知っている。そんな感じが「Declaration of War」のような世界なんだろうと思う。なんかそんな感じにどうしても惹かれてしまうところがあるな〜。

 また、彼らの最大の得意なところはライミングだと思う。とにかく的確に体に染み付く言葉をはめ込んでいく。しっかりと発音されて、その術も実にクールである。